平成30年(2018年)8月に金融庁、経済産業省、農林水産省が公表した「平成31年(2019年)度税制改正要望」で 「金融所得課税一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」が要望として挙がりました。
- 平成31年度 税制改正要望項目(平成30年8月 金融庁)
- 平成31年度地方税制改正(税負担軽減措置等)要望事項:金融庁
- 個人投資家向け税制に関するアンケート~「金融所得課税一体化の範囲拡大」で個人投資家の動向は?:SBI証券(2018年12月21日)
現在の税制では、FXの損益と株式投資の損益を損益通算することができません。
たとえば、株で100万円儲かって、FXで100万円損しても損益通算できないため、株の利益100万円に対しては20.315%の税金を支払う必要があります。
株とFXで損益0円なのに、税金は約20万円なので、結果的にトータルの損益は-20万円になるという投資家にとって不利と言えるような税制となっています。
しかし、「平成31年(2019年)度税制改正要望」では、株とFXで損益通算できるようになる税制に変更しようという議論が挙がっています。
もし、株とFXで損益通算が可能になれば、今まで株式投資しかやっていなかった投資家がFXも始めたり、その逆のパターンもあったりして、投資の幅が広がります。
また、ヘッジとしても利用できます。
たとえば、株式投資の現物取引しかやっていない投資家が、株価の高値でドル円のSELLをすることによって、円高株安の流れに変わった時のヘッジとなります。
平成30年度(2018年)の税制改正大綱では、次のように定義されています。
デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所の実現にも資する観点から、多様なスキームによる意図的な租税回避の防止するための実効性のある方策の必要性を踏まえ、検討する。
証券会社11社のアンケート調査によると、「上場株式等(国内上場株式、外国上場株式、公募株式投資信託等)」と「デリバティブ取引等(先物・オプション取引、FX、商品先物等)」との損益通算が認められることに「賛成」と回答した人は6,077名中93%だそうです。
上場株式等 | デリバティブ取引等 |
---|---|
国内上場株式 外国上場株式 公募株式投資信託等 |
先物 オプション取引 FX 商品先物等 |
2018年現在の税制では、上の表の左側と右側の損益通算は認められていませんが、左右両者が損益通算できるようになれば、税制もシンプルになりますし、新たなる投資を始めてみようと思う投資家も増え、日本の金融市場の活性化にもつながるはずです。
投資にまつわる税制は複雑で難しく、私もかなり勉強しましたが、以下のシリーズがすごく分かりやすかったです。
2003/5/8出版
2004/6/10出版
2005/7/7出版
2012/6/7出版
2015/10/30出版
最初の本は2003年と今から15年も前に出版されていますが、日本の投資に関する税制の歴史を垣間見ることができ、とても勉強になりました。
このシリーズを読むと、日本の税制も少しずつ進化しているように思えます。
2019年は株とFXの損益通算が可能になる年になるのでしょうか?期待したいと思います。