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未来を予測する男、ニトリ会長(似鳥昭雄)が予想する2020年の株価と為替、東京五輪前後で変わる

株価や為替の予想がすごく当たると評判のニトリホールディングスのニトリ会長(似鳥昭雄さん)。

ニトリホールディングス自体、円高時に為替予約を入れて海外から商品を割安に仕入れる企業、つまり円高の恩恵を受ける企業です。

ニトリホールディングスの場合、為替が1円円安になると15億円の営業利益を失うそうです。

また、為替予約をかけるタイミングはニトリ会長自身が景気動向を見極めながら決めるそうです。

このように、実業で為替と表裏一体の経営を行っている人なので、アナリストやエコノミストの為替予想と違い発言や予測に重みを感じます。

2019年の株価・為替予想については、以下の記事に書いていますが、ほぼ当たっています。

株価・為替予想の達人、ニトリ会長「2019年は円相場は年平均で1ドル100~110円。今より円高に」

2018年12月28日

今回はニトリ会長による「2020年の株価と為替の予想」を紹介したいと思います。

未来を予測する男、ニトリ会長(似鳥昭雄)が予想する2020年の株価と為替

私が調べた限り、雑誌「PRESIDENT」と「週刊現代」にニトリ会長のインタビュー記事がありました。どちらもほぼ同じ内容になっていますが、両者ともに紹介します。

まずは、「PRESIDENT 2020年1月17日号」に掲載された記事ですが、こちらは2019年12月にインタビューが行われたようです。

PRESIDENT(プレジデント)2020年1/17号(日本人の給料、貯金 家、年金)

怖いほど当たる!ニトリ会長の経済予測2020 「景気が悪くなる兆候」を探る方法 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)(2019/12/27)

20年についても全体的には105円前後の円高傾向になると思います。私の感覚としては、毎年1~2月ごろに日本企業が円を買う時期で円高に動く。そのときポイントになるのが105円を切るかどうかだと考えています。

2020年の為替(ドル円)は1ドル105円前後ということです。

「毎年1~2月ごろに日本企業が円を買う時期で円高に動く」とおっしゃっていますが、これは日本企業は3月決算の企業が多いからです。

海外で稼いだ外貨を決算期末前に円に両替する(=外貨売り円買い=円高)という需要があるからです。

詳細は以下の記事に書いています。

3月は3月31日の決算期末を睨んだ日本企業の海外利益の里帰りで円高になりやすい

2017年3月6日

日本株は日銀の買い支えによって株高が維持されています。19年の日経平均株価の時価総額は約390兆円。日銀が毎年約6兆円を買い増し、現在約31兆円を間接的に保有しています。つまり、7~8%を日銀が保有している状態にある。本来であれば、19年8月に為替が円高方向に動いた際、日経平均株価は2万円を割り込んでもおかしくなかったと考えています。しかし、日銀の買い支えによって株価が維持されました。

20年の日経平均株価については引き続き日銀の買い支えによって大きな下げはなく、年末には2万2000円を中心に、2万1000~2万3000円の水準に留まるだろうと考えています。もしそれよりも下がるとすれば、アメリカの景気次第ではないでしょうか。

2020年の株価(日経平均株価)は年末に2万1000~2万3000円の水準ということです。

日本株の場合、日銀がETFを通して日本株を買っていて売却しないので、実際よりも株価は高値を保っています。

2020年3月からはさらに1日の購入額を増やしており、3/1〜3/13までですでに6012億円ものETFを購入しています。

インタビューでは景気判断材料についても語っています。

例えば、08年のリーマンショックのときも、その前年に住宅価格が2~3倍になるという非常に危険な兆候がありました。

私は景気の先行指標として「新設住宅着工戸数」を重視しています。建築が増えると住関連商品や家電などの消費も増えるため、関連する企業の景気に大きく影響するのです。08年のリーマンンショックのときも先行して動いていました。例えば、04年は約119万戸、05年は約124万戸、06年は約129万戸と推移していましたが、07年に約106万戸と大きく減少していたのです。新設住宅着工戸数は、人口の1%に当たる120万戸以上が景気の良い状態とされます。リーマンショック以降は、100万戸が一つの目安ですね。19年の予測は86~91万戸と下降気味で、20年は80万戸台、24年以降は70万戸台になると予測されています。

ニトリは家具を取り扱っているだけあって、ニトリ会長は景気判断をする時に「新設住宅着工戸数」を重視しているようです。

私の友人はカーテン屋で営業しているのですが、ここ数年は新築マンションの数が減っているので、以前ほどカーテンが売れないと嘆いていたことを思い出しました。

「人口減 → 住宅着工減 → 住関連商品や家電の消費減」ですから、今後はどの業界も日本以外の人口が増えていく国を商圏に組み入れないと厳しくなります。

景気循環においては、過去と同じ現象が繰り返されます。1964年の東京五輪後も、不況の始まりでした。その意味で言えば、東京五輪以降、土地や建物、鉄をはじめとした原材料価格も下がっていくでしょうし、人材も買い手市場になっていくはずです。これは過去50年以上、ビジネスの経験で得た私の知見です。

オリンピック後は不況の始まりということですが、コロナウィルスが原因で東京オリンピックが延期か中止になる可能性もあり、すでに相場は暴落し、弱気相場入りしています。

次は「週刊現代」のインタービュー記事を紹介します。

週刊現代 2020年11・18日号:ニトリ会長・似鳥昭雄のニッポン経済予測〜「東京五輪まで」と「東京五輪から」

2020年の日経平均株価は、2万2000円を中心に2万1000円〜2万3000円の水準に留まるだろうと考えています。NYダウも、2万6000ドルを中心に2万5000ドル〜2万7000ドルのレンジが妥当だと思います。
つまり、株価は下降傾向を持ちながらも、底堅く維持するという予測になります。

2020年は日経平均株価が2万1000円〜2万3000円、NYダウが2万5000ドル〜2万7000ドルという予想です。

たしかに、世界経済が減速する以上、本来ならば株価が下がってもおかしくはありません。
ただし、日本経済にかぎっていえば、以下の2つのイベントのおかげで株価は維持されるでしょう。1つは7月24日から8月9日まで開催される東京五輪。もう1つはアメリカで11月3日投開票される大統領選挙です。
しかし、この2つの節目を過ぎるころから、2020年の経済は下降をたどると考えています。

東京オリンピックと大統領選挙で株価は維持されるということですが、コロナウィルスで東京オリンピックの開催が危ぶまれています。

64年の東京五輪も不景気の始まりでしたが、今回も同じようになると考えています。当然、オリンピック需要がなくなることで、景気は減速する。消費増税の影響も本格的に出てきます。
注目すべきは、為替の動きです。東京五輪までは円安になると思われますが、東京五輪後から円高の兆候が出てくると考えています。

ニトリ会長は東京オリンピック(7/24開催)までは円安で、東京オリンピック後から円高と予想されています。

東京オリンピックが1年延期になったら、不景気の始まりも1年延ばせるのでしょうか?

そして、東京オリンピックが中止になってしまったら、為替はどちらに動くのでしょうか?

誰が大統領になろうとも、アメリカには景気減速の波が押し寄せると思います。たしかに、現在のアメリカ経済は、景気拡大のサイクルが09年7月から始まり、126ヶ月と過去最長となるなど好調です。
ところが、19年第2四半期、第3四半期の企業設備投資の伸び率はマイナスに陥っており、警戒が必要な水準になっています。さらに19年の新築住宅着工件数も低迷しており、いつ景気後退しても不思議ではない状態にあると思います。

東京五輪後に始まる円高がさらに進み、年末に向けては105円以下になるのではないかと予想しています。
そして21年に入ると株価も落ち始めると考えています。景気の山が高かった分、株価は相当下がり、不況が長引くのではないでしょうか。

東京オリンピック後に円高が進み、2020年の年末にドル円は105円以下になると予想しています。

すでにコロナショックで3/9に1ドル101.1円まで下落したドル円ですが、3/13には106円台まで戻しています。

コロナショックで弱気相場入りしてしまったので、ニトリ会長のインタビュー時とはだいぶ相場や世界経済をとりまく環境も変わってしまいましたが、年末の株価と為替がどの程度になるのか楽しみに待ちたいと思います。

本格的な不況に入れば、おそらく株価や不動産は下落するので、その時に備えなければなりません。
私はこの50年間、景気が良くなる時期よりも、悪くなる時期がいつなのかということを考え続けてきました。
景気が悪いときはむしろチャンスです。土地・建物や建築費の下がる不況期に投資すれば、割安に物件を手に入れることができ、優秀な人材の採用もできます。
景気の良いときは、可能な規模の3割程度しか投資しませんが、ひとたび不況となれば、借り入れをしてでも2〜3倍の投資を実行する。こうすることで、再び景気回復期になれば利益を享受できる、筋肉質な財務体質を作れます。

ニトリ会長のこのような逆張り思考が純粋にかっこいいです。

言うのは簡単ですが、実際に50年間これをやっているからすごいと思います。

※追伸(2020月3月29日)

2020年3月28日の日本経済新聞にニトリホールディングスの決算の内容が掲載されていたのですが、ニトリは2019年夏に円高が進んだ局面で1ドル107円台半ばで為替予約をしたそうです。

ニトリHDの20年2月期、営業益6%増 33年連続最高益:日本経済新聞(2020/3/28)

機動的な為替予約も寄与した。昨年夏に急激に円高が進んだ局面で、下半期に必要となる分について為替予約を実施。通期の決済レートは1ドル=107円台半ばと前の年より3円近い円高となった。ニトリは商品の約9割を海外から輸入しており、円高になると商品の調達コストが下がる。

ここで2019年のドル円チャートをみてましょう。

日本の夏といえば7月か8月です。そして、通期の決済レートは1ドル=107円台半ばということなので、青丸を付けたあたりで為替予約を実施したようです。

2019年のドル円は上が4月の112.40円、下が8月の104.45円なので、年間値幅は8円ほどと非常に狭い年でした。

※追伸(2020月4月7日)

2020年4月6日、ニトリHDの2020年2月期の決算発表がありましたが、決算説明会でニトリ会長が今年の年末の日経平均株価とドル円為替レートについて触れたそうです。

ニトリHD会長、年末の日経平均見通し「2万円を下回るか」:日本経済新聞(2020/4/6)

ニトリホールディングス(9843)の似鳥昭雄会長は6日、都内で開いた決算説明会で日経平均株価の見通しについて、今年末に「2万円を下回るのではないか」と述べた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が見通しにくいとしながらも、日米の景気悪化が重荷になりそうだとの見方を示した。

為替レートについては、米国の住宅や雇用の関連指標の悪化で「1ドル=100円よりも円高・ドル安が進む可能性はある」と自身の考えを述べた。

日経平均株価が2万円より下、ドル円は1ドル100円より円高になる可能性があるということです。

さらに、今年の想定為替レートは1ドル104円だそうです。

ニトリHDの今期、純利益6%増 下期回復見込む:日本経済新聞(2020/4/6)

業績予想の前提となる想定為替レートは1ドル=104円とした。コロナの感染拡大を受けて急速に円高が進んだ局面などで為替予約を機動的に実施。商品の仕入れ費用が下がり、利益率が改善すると見込んでいる。

コロナショックで1ドル101円台まで円高になりましたが、その過程で為替予約を入れたようですね。さすがニトリ会長です。

2019年は1ドル107円で為替予約を入れましたが、2020年は3円円高で予約できています。去年よりも為替差益が出やすい為替レートです。

2020年2月期の決算説明会資料にも「2021年2月期の連結業績予想」で為替レートが1ドル104円となっています。

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