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【書評】貯金40万円が株式投資で4億円 元手を1000倍に増やしたボクの投資術

貯金40万円が株式投資で4億円 元手を1000倍に増やしたボクの投資術
貯金40万円が株式投資で4億円 元手を1000倍に増やしたボクの投資術

個人投資家として有名な「かぶ1000」さんが書いた貯金40万円が株式投資で4億円 元手を1000倍に増やしたボクの投資術を読みました。

この本では序章と1章を使って、かぶ1000さんの個人投資家としてのこれまでの歩みが書かれているのですが、これが唯一無二で大変面白いです。

かぶ1000さんは中学2年生(1988年)から元手40万円で株式投資を始めたそうです。

中学2年と言えば、私の場合は野球部に入っていたので、毎日野球の練習をしていましたが、かぶ1000さんは毎日、株式投資のことで頭がいっぱいな生活を送っていたようです。

そして、中学3年で300万円まで増やし、高校生になると地元の証券会社に入り浸り、高校1年生で1000万円となり、高校2年生で資産は1500万に達しました。

高校卒業後は会計の専門学校に進学し、専門学校を卒業すると証券会社からの就職の誘いを断り、専業投資家として歩むことを決めました。つまり、かぶ1000さんは就職経験がないのです。

そして、30歳(2005年)で資産は3000万円まで増え、2011年(37歳)には1億円を突破、2015年には3億円、2019年には4億円まで資産を増やすことに成功しています。

そして、この本が出版されたのが2021年1月です。

かぶ1000さんの投資スタイルは「バリュー株投資」ですが、そのきっかけとなったのは2000年に日本語訳が出版されたベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」です。

かぶ1000流バリュー株投資の基本

株式投資というと、業績や成長性などを見て投資するイメージがありますが、バリュー株投資は会社が保有する現金や不動産、有価証券といった現時点で企業が保有する資産を評価して投資をします。

現金や賃貸用不動産をたくさん持っていれば、たとえ業績が一時的に大きく落ち込んだとしても、資産価値は大きく傷まないため、株価が暴落することもあまりなく、会社が潰れるとも思わないからです。

そんなバリュー株投資には「資産バリュー株投資」と「収益バリュー株投資」の2種類あります。

資産バリュー株投資
企業が所有する資産価値に対して、株価が相対的に低い銘柄を探して投資する手法。

※資産・・・企業が所有する現金、株式などの有価証券、土地や建物

PBRが低い銘柄を見つけて、会社の資産価値に対してどれだけディスカウントされているのかを調査して投資する。

PBR・・・企業が持っている純資産(自己資本)に対して株価が割安か割高かを示す指標

収益バリュー株投資
企業の収益力に対して、株価が割安な銘柄を見つけて投資する手法。

PERが低い銘柄を見つけ、企業の利益(収益力)が高い銘柄に投資する。

PER・・・企業の収益(純利益)に対して株価が割安か割高かを示す指標

かぶ1000さんが得意とするのは「資産バリュー株投資」です。

なぜなら、収益バリュー株は業績次第のところあり、業績が良い年もあれば、業績が悪い年もあります。また、◯◯ショックなど景気悪化や大震災などの影響も受け、不確実性が高いです。

一方、資産は長い企業活動によって培われたもので、ある日突然、資産が半分になったり消滅することは考えにくく、安全性が高いからです。

実質PBRと割引率

銘柄が割安かどうかを判断するのにPBRやPERといった指標が使われますが、かぶ1000さんは単なるPBRではなく実質PBRを重視しています。

実質PBRとは表面的なPBRに保有している資産を時価評価した際の簿価とのギャップである「含み資産」を加えたものです。

純資産の中身は主に「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」の3つですが、ここに「含み損益」を加味します。

仮に、1株あたり純資産が1000円だとして、「含み損益」が1株あたり500円あるとすると、1株あたり1500円と評価するのがかぶ1000さん流です。

実質PBR
実質PBR = 株価 ÷ 含み資産を加えた1株あたり純資産

実質PBRを把握したら、それがどれぐらい割安なのかパッと見で分かりやすくするために「実質PBRを割引率」で見ます。

割引率の計算方法は以下の通りです。

実質PBRを「割引率」として見る
割引率 =(PBR – 1)× 100%

PBR0.5倍の場合なら(0.5 – 1)× 100% = 割引率-50%

PBR0.8倍の場合なら(0.8 – 1)× 100% = 割引率-20%

PBR1倍の場合なら(1 – 1)× 100% = 割引率0%

PBR0.5倍の銘柄なら会社の純資産よりも50%も割り引かれた評価ということです。

かぶ1000さんは、こうした割引率の高いお得な銘柄を探して投資しています。

また、通常のPBRは以下のように分類しているそうです。

PBRは小さいほど割安
PBR0.4〜0.5 → 割安

PBR0.3〜0.4 → 超割安

PBR0.3以下 → 激安

ただし、純資産の内容によっては以下のように評価も変わってきます。

PERを株式益利回りとして評価

PERは企業の利益に対して株価が割高か割安かを示すものですが、かぶ1000さんはPERを常に「株式益利回り」として評価しています。

以下の計算のように、株式益利回りとはPERの逆数(1/PER)です。

PERを「株式益利回り」として見る
株式益利回り =(1/PER)× 100%

PER10倍の場合なら(1/10)× 100% = 株式益利回り10%

PER8倍の場合なら(1/8)× 100% = 株式益利回り12.5%

PER20倍の場合なら(1/20)× 100% = 株式益利回り5%

PER10倍の会社なら株式益利回りは10%となり、PERを益利回りに置き換えることで国債や預貯金などの金利や賃貸用不動産の表面利回りとの比較が簡単にできるようになります。

株主資本の成長を最も重視

かぶ1000さんは株主資本が前期と比べてどのくらい増えたかを「株主資本成長」として重視しています。

株主資本の成長が大きい銘柄ほど、資産バリュー株投資の対象となります。

株主資本(純資産)
株主資本(純資産) = 資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金

貸借対照表の「純資産の部」の「株主資本」の主な内容は「資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金」です。

「剰余金」とは企業の利益から株主に配当を払った金額を引き、次の年に繰り越される分のお金です。

利益剰余金は「内部留保」とも呼ばれます。

毎期着実に利益を出し続ける企業なら、利益剰余金が毎期増えるので、株主資本は安定的に成長します。

かぶ1000さんは利益剰余金の積み上げに加え、保有する資産(賃貸用不動産、株式などの有価証券)の増減額も加えて評価しています。

【保有する有価証券の含み損益の調べ方】

株式などの有価証券を多く持つ企業の場合、決算短信の「その他の包括利益累計額」にある「その他有価証券評価差額金」が前期と比べて増えているか減っているかを確認することで、保有する有価証券の評価が上がっているか下がっているかを見ることができます。

上の画像は三菱地所の2026年3月期第1四半期決算短信ですが、「その他有価証券評価差額金」が前期よりも250億円(203,245-178,148=25,097)ほど増えています。

「その他有価証券評価差額金」とは、その企業が保有する株式や債券などの有価証券を時価評価した時の差額を金額で示したものです。この金額が大きければ大きいほど、保有する有価証券の含み益が大きいことを意味します。

「その他有価証券評価差額金」は四半期決算ごとに(年4回)開示されます。

【保有する賃貸等不動産の含み損益の調べ方】

また、かぶ1000さんが重視する企業の含み資産は賃貸等不動産です。

企業が所有する不動産には賃貸不動産、遊休地、工場などがありますが、賃貸不動産は時価(今の価格)で、その他の土地や工場などは簿価(買った時の価格)で記載されます。

不動産で含み資産としてカウントするのは、本決算の決算短信や有価証券報告書の「賃貸等不動産関係」の項目で期末時価が記載されている「賃貸等不動産」です。

ここに賃貸等不動産の「連結貸借対照表計上額」と「期末時価」との差額が開示されています。

この差額が大きいほど保有する賃貸等不動産の含み益が大きいことを意味します。

上の画像は三菱地所の2025年3月期決算短信です。

今期の「連結貸借対照表計上額」と「期末時価」の差額が「8,873,849 – 4,258,795 = 4,615,054」で4兆6150億5400万円。

前期の「連結貸借対照表計上額」と「期末時価」の差額が「8,376,933 – 3,960,946 = 4,415,987」で4兆4159億8700万円。

前期から今期にかけて1990億6700万円(4,615,054 – 4,415,987 = 199,067)増加しているため、そのぶん「含み益」が増えて、株主資本が成長したと見ることができます。

株主資本成長
株主資本成長 = 株主資本 + 純利益 + その他有価証券評価差額金増減額 + 賃貸用不動産含み損益増減額

株主資本の成長を調べるには決算書を読めるようになる必要があります。私が先日読んだ以下の本は初心者でも理解しやすく説明されているのでオススメです。

【書評】80分でマスター! [ガチ速]決算書入門

2025年10月1日

株価の割安度を評価するために株価の位置を見定める

かぶ1000さんは投資候補となった銘柄の今の株価が、過去と比較してどの位置にあるのかを可能な限り長い期間で確認します。

土地バブルが始まったとされる1989年まで遡ったり、優良な上場企業が多く誕生した1970代、中には1949年(終戦直後の混乱期で行動経済成長が始まるスタートの年)まで遡ったりすることもあるそうです。

かぶ1000流ネットネット株

かぶ1000さんの心の師匠であるベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」のなかで「会社を買収してすぐに精算したときに、買収した金額以上のお金が残る銘柄」をネットネット株として推奨しているそうです。

ネットネット株とは流動資産(1年以内に現金化できる資産)から負債を差し引いた「正味流動資産」に対して株価が割安な株のことです。

簡単に言うと、「1万円が入った財布が5000円で売られている」ような銘柄です。

資産バリュー株投資のなかでも、かぶ1000さんが大きな資産を形成するうえで一番役立ったのがネットネット株への投資ということです。

ただし、かぶ1000さんのネットネット株の定義はグレアムよりも換金性に重点を置いています。

グレアム流ネットネット株
正味流動資産(流動資産 – 総負債)× 2/3 > 時価総額

グレアム流ネットネット株では、正味流動資産にすぐに現金化できるとは限らない商品(在庫)や原材料を含んでいるので、正味流動資産を3分の2と控えめに評価しています。

かぶ1000流ネットネット株
換金性が高い流動資産 – 総負債 > 時価総額

かぶ1000流ネットネット株では、流動資産の中の商品・仕掛品・原材料・製品といった換金性の低いものの評価を保守的にゼロと計算し、換金性が高い流動資産を以下のように定義しています。

換金性が高い流動資産
換金性が高い流動資産 = 現金及び預金 + 受取手形及び売掛金 + 有価証券 + 投資有価証券 – 貸倒引当金

現金及び預金、受取手形及び売掛金、有価証券(1年以内に満期が来る有価証券や短期売買目的の株式など)は貸借対照表(B/S)の「資産の部」の「流動資産(1年以内に現金化できる資産)」に記載されています。

投資有価証券(投資目的ではない1年以上現金化しない株式や社債や国債などの有価証券)は貸借対照表(B/S)の「資産の部」の「固定資産(1年以上現金化されない資産)」の「投資その他の資産」の項目に記載されています。

流動資産に計上されている「貸倒引当金」は売掛金や受取手形などの貸し倒れに備えて引当しているものです。

固定資産に計上されている「貸倒引当金」は子会社や関連会社の所有と目的とした債券に対する貸し倒れに備えて引当しているものです。

さらに、ネットネット指数で割安度を評価します。かぶ1000さんはネットネット指数が1未満が最低条件としているそうです。

ネットネット指数は小さいほど割安
ネットネット指数 = 時価総額 ÷(換金性が高い流動資産 – 総負債)

ネットネット指数0.66未満 → 超割安

ネットネット指数0.5未満 → 激安

グレアム指数(ミックス係数)

企業の価値は「どのくらい利益を出せるか」「どのくらい純資産があるか」で決まりますが、前者を見る指標がPER、後者を見る指標がPBRです。

利益面(PER)でも純資産面(PBR)でも割安で価値ある銘柄をスクリーニングする時に用いられるのがグレアム指数(ミックス係数)です。

グレアム指数(ミックス係数)
グレアム指数(ミックス係数)= PER × PBR

22.5未満が割安とされていますが・・・

かぶ1000流は5.0未満と割安と評価

グレアム指数(ミックス係数)は22.5未満だと割安とされていますが、かぶ1000さんはより厳しくグレアム指数(ミックス係数)が5.0未満を割安と評価しています。

なぜなら、PBRだけでは純資産の中身が吟味できないので控えめに見る必要があるからです。また、日本では割安銘柄が多いので、22.5だと数多くの銘柄がスクリーニングされますが、5.0未満だと10%未満となり、投資対象が絞られるメリットがあるからです。

ルックスルー利益とルックスルー純資産

私を含め多くの個人投資家は売却益や配当金を得るために株式投資をしていると思われますが、かぶ1000さんは売却益を得ることを目標にしていません。

かぶ1000さんが重視しているのは、なるべく少ない資金でポートフォリオ全体の「ルックスルー利益」と「ルックスルー純資産」をいかに高めるかです。

ルックスルー利益
ルックスルー利益(円)= 実質EPS(1株あたり利益)× 保有株数
ルックスルー純資産
ルックスルー純資産(円)= 実質BPS(1株あたり純資産)× 保有株数

株価はその時々で上下しますが、企業が利益を出して資産が積み上がれば「ルックスルー利益」と「ルックスルー純資産」は高まります。

かぶ1000さんは、自分の利益と資産の持ち分が増えてくれたら、株価が一時的に下がっても気にならないそうです。なぜなら、利益と資産が拡大しているなら、株価は適正な水準に評価されると信じているから。

株価は市場価格だが、かぶ1000さんが見ているのは、投資先企業がどれだけ利益を生み出す力があり、純資産を積み上げられているかという企業の本質的価値です。

持ち株を売却すると、現金は増えるかもしれませんが、「ルックスルー利益」も「ルックスルー純資産」も下がります。よって、かぶ1000さんは持ち株をなるべく売りたくないと考えています。

この考え方は「早すぎる利食い」をしてしまって後悔することが度々ある私にとって目からウロコでした。

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